抄録
消費者の遺伝子組換え植物に対する不安が未だ解消されない原因の一つに、組換え植物作製の際に選抜マーカー遺伝子として用いる細菌由来の抗生物質耐性遺伝子等が挙げられる。そのため、国際的にも安全性を十分に配慮した新しい選抜マーカー遺伝子を用いた選抜技術の開発が求められている。当研究室ではこれまでに、シロイヌナズナのAtHOL1タンパク質がチオシアン酸イオン(NCS-)に対するS-adenosyl-L-methionine (SAM) 依存性メチル基転移酵素活性が高いことを生化学的に明らかにした。さらにAtHOL1遺伝子破壊株を用いた解析よりAtHOL1遺伝子が細胞内においてNCS-の代謝に関与しており、AtHOL1過剰発現シロイヌナズナが培地に添加したKSCNに対する耐性を高めることを明らかにした。そこで、AtHOL1遺伝子をマーカー遺伝子とし選抜薬剤としてKSCNを用いた、抗生物質を使わない植物由来の遺伝子を用いた新規遺伝子組換え植物選抜技術の開発を行った。AtHOL1遺伝子およびカナマイシン耐性遺伝子を導入した形質転換シロイヌナズナのT2種子を用いて、選抜条件の検討を行なった。その結果、培地に添加する選抜薬剤KSCNの適当な濃度範囲および選抜培養時の光条件を見い出した。本研究により確立した技術により、遺伝子組換え植物の選抜が可能であることが示された。