抄録
形質転換技術を応用するためには,発現させる遺伝子のみならず,適切な場所とタイミングで目的遺伝子を発現させるためのプロモーターを得る必要がある.2A11は完熟期のトマト果実から単離された遺伝子で,そのプロモーターが果実特異的発現を目的とした形質転換体の作出に用いられているが,発現の詳細は明らかではない.そこで本研究では,2A11プロモーター下でGUSを発現させた形質転換トマトを作出し,2A11プロモーターの発現部位とタイミングを明らかにした.バイナリーベクターpBI121(Clontech)のCaMV 35Sプロモーター領域を2A11プロモーター領域約4kbに置換し,トマト‘マイクロトム’の形質転換体を作出した.形質転換体の果実(開花後0,10,20,30,40,50日)切片と果実以外の器官をX-Glucで染色したところ,幼葉,成葉,茎および花ではいずれも染色は確認されなかったが,果実では全てのステージにおいて染色が見られた.特に開花後20日および30日では果実全体に強い染色が見られ,開花後40日および50日では全体の染色はそれより弱かったが,維管束と種子で強い染色が見られた.この2A11プロモーターを用いて液胞型プロトンATPase(V-ATPase)の発現を抑制した形質転換トマトは,果実が小さく種子数が減少するなどの形質を示しており,そのデータも合わせて報告する.