抄録
近年の科学・科学技術の発展には目を見張るものがあるが、それに伴い様々な問題が生じている。科学技術・理科教育の問題、エネルギー問題、環境問題などの社会的問題、また遺伝子組換え技術やヒトES細胞、ヒトクローン細胞を用いた技術や研究などの倫理的問題など様々である。
こうした中で、「科学コミュニケーション」つまり科学や科学技術に関する知識・情報を広く社会と共有することの重要性が指摘されるようになった。これまでにもこのような活動は行われてきた。科学者コミュニティから社会に向けて科学に関する情報を発信することで、一般市民の科学に対する興味関心を喚起したり、科学に対する理解や科学リテラシーを向上させたりするような活動もその一つに含まれる。しかし、これらの活動だけでは上記の問題は解決されることはない。社会が関わる問題には一般市民の参加が必要なのである。現在期待されていることは、科学者のコミュニティ自身が積極的に情報伝達に直接関わり、一般市民と対話し社会について学ぶこと、つまり社会と科学の双方向のコミュニケーションである。我々はその実践として「ゲノムひろば」という一般市民と研究者の双方向の交流の場を2002年度より継続開催している。
本大会では、日本の科学コミュニケーションの歴史、そして「ゲノムひろば」という実践の場を紹介し、単純な普及活動ではない、科学コミュニケーション活動の今後の在り方について考察したい。