日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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日本植物生理学会論文賞: ミヤコグサにおける菌根誘導型リン酸トランスポーター遺伝子のノックダウンは相利共生を抑圧する
前田 大輔芦田 かなえ井口 恵太Chechetka Svetlana土方 彩加奥迫 安弘出口 雄一泉井 桂*畑 信吾
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p. A0004

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抄録
アーバスキュラー菌根経由のリン酸吸収に主要な役割を果たす菌根誘導型リン酸トランスポーター遺伝子LjPT3のcDNAをミヤコグサから単離した。LjPT3の発現は菌根菌の樹枝状体を含む皮層細胞に局在していた。遺伝子産物の輸送活性は、高親和性リン酸トランスポーターを欠く酵母突然変異体を相補することによって確かめた。当該トランスポーターの生理的役割をさらに明らかにする目的で、毛状根形質転換によるRNAi法を用いてLjPT3遺伝子ノックダウン植物を作成した。予想通り、ノックダウン形質転換体は菌根経由のリン酸吸収が減少したため、低リン酸培地における生育不良を引き起こした。ただし意外なことに、ノックダウン形質転換体では菌根菌の樹枝状体の数が非常に低下していた。また、ノックダウン形質転換体に菌根菌と同時に根粒菌を接種したところ、根粒が未熟なままネクローシスを引き起こした。このような観察を基にして、宿主植物は常に菌根菌の働きを監視していると推察した。今回の実験では、ノックダウン形質転換体は菌根経由のリン酸吸収量が少ない原因を菌根菌の働きが悪いと誤認識したために、菌根菌排除または菌根形成抑制の応答を示したと思われた。また、根粒菌は菌根菌への宿主応答のあおりを食ったようであった。なお、本論文の骨子はPNAS 104: 1720-1725 (2007); Funct. Plant Biol. 34: 803-810 (2007)で追認された。
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© 2008 日本植物生理学会
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