日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
会議情報

植物における活性窒素代謝
*坂本 敦
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. S0008

詳細
抄録
植物における NO の普遍的生理機能の解明が進むにつれ,その正負両面の作用を媒介する活性窒素分子種の存在が明らかにされつつある。活性窒素とは Nathan と Shiloh (1998) によれば,生理環境下で生成する無機窒素酸化物のなかで,NO(および NO+)からその最も安定な酸化物である硝酸(NO3-)に至る酸化還元中間体(NO,NO2,NO2-,N2O3など)を指す。また,これらの活性窒素酸化物に由来して副次的に生じる生理的あるいは化学的に活性な化合物も包含され,その例として生体 NO リザーバー/ドナーとして知られる S-ニトロソチオールや,強力な酸化剤かつニトロ化剤であるペルオキシナイトライトなどが挙げられる。活性窒素が有する反応性と分子修飾能は,これらの分子種が NO シグナリングを関与するだけでなく,その生成濃度や細胞の生理条件に応じて普遍的に細胞毒性をもたらすこと(活性窒素ストレス)を示している。したがって,活性酸素と並び生物にとって「諸刃の剣」である活性窒素に対する代謝機能は,おそらく NO シグナリングの制御のみならず,活性窒素ストレスに対する細胞防御の観点からも極めて重要と考えられる。本発表では,植物の活性窒素の代謝基盤に関する最近の知見を紹介するとともに,関連研究の現状と今後の展望について議論したい。
著者関連情報
© 2008 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top