抄録
植物の発生過程において体細胞分裂、核内倍加の2つの細胞周期が時間的、空間的に正しく進行することは器官の形成や生長に非常に重要であるが、これらの細胞周期が発生段階でどのような制御を受け、またどのように器官形成、生長に貢献するのかについてはほとんど分かっていない。体細胞分裂周期の制御機構については近年急速に理解が進んできたが、核内倍加の分子機構についてはまだ未解明の点が多い。私達のグループはこれまでに核内倍加に異常を起こすシロイナズナの突然変異体群 (hypocotyl6-7, root hairless1-3, and brassinosteroid insensitive 3-5) の解析を通して、植物の核内倍加の正常な進行にはDNA トポイソメラーゼ VI複合体の働きが重要であることを明らかにしてきた。この酵素複合体を欠損した変異体では細胞分裂を終え、核内倍加に移行した細胞だけにATM及びATRに依存したDNA損傷応答が見られる。このことからこれらの酵素複合体は核内倍加周期に特異的に働いているものと考えられる。さらにこれまで相関関係は指摘されていながらも因果関係のはっきりしていなかった核相と細胞体積の関係について、私達は野生型や上記変異体の4倍体を作製し、核相が増加することが細胞体積の増大を誘導することを示した。今回のシンポジウムでは上記の結果を含めた最近の知見をもとに植物の核内倍加と細胞サイズ制御の分子機構について議論したい。