日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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細胞伸長、細胞分裂と核内倍加をつなぐ未知の統合システム:補償作用と倍数体の解析から見えてきたもの
*塚谷 裕一
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p. S0038

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抄録
器官のサイズは、それを構成する細胞の数とサイズに依存する。葉もその点、例外ではない。その葉における個々の細胞の振る舞いは、器官レベルの未知の統合システムによって統合されていると考えられる。そのようなシステムが存在することは、二つの現象から強く示唆される。すなわち補償作用と高次倍数体シンドロームである。
補償作用とは、葉の細胞数が著しく低下すると、細胞伸長が促進され大型の細胞が生じる現象で、葉やそれを基本とした有限成長型側生器官でのみ認められる。一方、細胞数の増加や細胞サイズの変化は、こうした調節を引き起こさない。細胞の分裂と伸長は、どう統御されているのだろうか。
一方高次倍数体シンドロームは、高次倍数体の器官サイズが、2倍体と同等か小型となる現象である。シロイヌナズナの場合、細胞サイズでは2倍体より4倍体が、4倍体より8倍体が大きい。ところが不思議なことに、葉のサイズについてみると、4倍体は2倍体より大きいものの、8倍体は2倍体よりむしろ小さい。これはいかなる制御によるものなのだろうか。
これらの疑問に答えるには、酵母など単細胞性生物の研究から得られた細胞周期の知見だけでは不十分であり、多細胞器官レベルでの解析が必須である。本シンポジウムでは、これまでにシロイヌナズナの遺伝学的解析から得られた知見を元に、器官レベルでの統御システムについて、いくつか仮説を掲げて問題提起としたい。
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© 2008 日本植物生理学会
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