抄録
花粉形成に関与するPPR遺伝子として、BT型細胞質雄性不稔性(BT-CMS)イネに対する稔性回復遺伝子Rf1を取り上げる。Rf1はミトコンドリア移行シグナルと18繰り返しのPPRモチーフをもつタンパク質をコードしている。また、BT-CMS系統ではatp6-orf79 が共転写され、ORF79タンパク質がミトコンドリアに蓄積する。一方、Rf1タンパク質が存在すると、共転写された後にatp6とorf79の遺伝子間領域において切断反応を受けることでorf79 RNAを生じるが、ORF79タンパク質はミトコンドリアに蓄積しない。このように、異常なORF79タンパク質のミトコンドリアへの蓄積がBT-CMSの原因であると考えられている。しかし、Rf1タンパク質がatp6-orf79 RNAに結合するか、また、ORF79の翻訳がどのように制御されているかについての解析はなされてこなかった。本研究では、atp6-orf79 RNAのプロセッシングと、その後のORF79の翻訳制御についての解析を行い、ORF79の翻訳がRNAの安定性によって制御されていることを見いだした。さらに、その他の細胞質に由来するCMSイネとBT-CMSとの比較から、BT-CMS以外のCMSに対するRf1の作用についても紹介したい。