抄録
高等植物のイソプレノイド生合成は、細胞質の酢酸-メバロン酸経路に加えて、プラスチドに存在する非酢酸メバロン酸経路があり、両者には代謝産物レベル、シグナル伝達レベルのクロストークがあると考えられている。私たちは、植物固有のイソプレノイド生産制御機構を調べるために、酢酸-メバロン酸経路の鍵酵素であるHMG-CoAレダクターゼの阻害剤に耐性な変異体をスクリーニングした。変異体の一つloi1の原因遺伝子LOI1は、ミトコンドリアに局在する新規なPPRモチーフを有するタンパク質をコードした(Kobayashi et al. (2007) Plant Cell Physiol 48: 322-331)。PPRタンパク質は、オルガネラに局在しRNAプロセッシング、転写後調節等の機能を有することが報告されているがPPRタンパク質のターゲットRNAが同定された例は極めて少ない。LOI1のターゲットRNAを同定するために、SELEX法およびシロイヌナズナ植物においてLOI1タンパク質と結合するRNAをスクリーニングした。その結果、ミトコンドリアゲノムに存在する呼吸鎖複合体の構成ユニットの一つであるシトクロームCオキシダーゼ遺伝子の転写産物が、LOI1のターゲットであることが判明した。本シンポジウムでは、呼吸鎖電子伝達系がイソプレノイド生合成に及ぼす影響について議論する。