抄録
植物の光合成活性の指標としてPAMクロロフィル蛍光計を用いたquenching analysisで汎用されるパラメータは、Fv/Fm, (Fm’-F)/Fm’, PQ, NPQ等である。これらの測定で、PSIIの光阻害、PSIIのdown regulation、P680周辺の電子伝達活性を推定できる。今回は、蛍光パラメータFv/Fmおよび ∆F/Fm’の異常の原因となる因子について考察する。
Fv/Fm値は、P680の近傍または酸化側の異常により低下する。また、光阻害の誘発および回復過程の異常も低下の原因となる。さらに、電子伝達または炭酸固定等に異常がある場合に、酸化的ストレス条件下では、光阻害が起こるため、Fv/Fm値が低下する。
(Fm’-F)/Fm’値はPSIIの量子収率を示し、この値の低下は、photochemical quenching (PQ)またはnon-photochemical quenching (NPQ)の低下による。PQの低下はPSIIの還元側の電子伝達または炭酸固定系の異常により引き起こされる。一方、NPQの低下は、xanthophyll cycleに依存したPSIIのdown regulation機構の異常、ステートトランジション機構の異常等に起因する。
2次元蛍光計を用いたスクリーニングにより単離されたシロイヌナズナ光合成変異株の解析例についても発表する。