抄録
2000年にシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の全ゲノム配列が発表されて既に7年が経とうとしている。その間、2004年にイネの全ゲノム配列も公開されるに至った。このような状況のもとモデル植物のゲノム情報を利用した作物研究の新たな展開が始まろうとしている。その中で我々はハクサイ(Brassica rapa)を用いて、病傷害応答に着目したESTと完全長cDNAの整備、及びシロイヌナズナ遺伝子との対応付けを推進している。また、これらの成果を公開するためのデータベースABRANA(Arabidopsis and BRAssica Network Access)の整備も進めている。現在、ハクサイゲノムプロジェクトが欧米韓を中心に進んでおり、近い将来、アブラナ科作物、特にハクサイを取りまく研究状況は急変することが予想される。シロイヌナズナと同じアブラナ科に属するハクサイではシロイヌナズナに感染する多くの病原菌が同じく感染する。また、病傷害応答性のメカニズムの共通性も高いことが考えられ、シロイヌナズナで得られた知見の応用に適した作物モデルとなりうる。本シンポジウムにおいては、我々が進めているハクサイcDNAの整備の状況に加えて、Brassica研究の国際コンソーシアムの現状、及び、今後のハクサイ研究の課題についても言及したい。