抄録
根こぶ病は、完全寄生真核生物Plasmodiophora brassicaeによって引き起こされるアブラナ科野菜の土壌伝染病害である。感染した植物の根はこぶ状に肥大し養水分吸収が悪くなるために、地上部の生育が著しく悪化し最終的には枯死する。ハクサイでは、ヨーロッパの飼料用カブを抵抗性素材とした交雑育種により抵抗性品種が多数育成されているが、根こぶ病病原体の病原性の分化により抵抗性品種の発病が報告され問題となっている。これまでの抵抗性品種の育成には、労力と時間を要する接種検定による抵抗性個体の選抜が必要であった。そこで我々はDNAマーカーを利用した効率的な抵抗性品種系統の選抜技術について検討し、2つの根こぶ病抵抗性遺伝子座(Crr1, Crr2)に連鎖するDNAマーカーを開発した。これらのDNAマーカーを利用することにより、戻し交雑集団から強度抵抗性の系統を選抜できることを明らかにした。マーカー選抜の効果をさらに高めるためには、抵抗性遺伝子のより近傍に位置するマーカーが必要である。Crr1, Crr2はハクサイの連鎖地図上では異なる連鎖群に位置するが、これらに連鎖するDNAマーカーはいずれもシロイヌナズナ第4染色体の一部の領域と高い相同性を示した。そこでシロイヌナズナのゲノム情報を利用して、効率的に近傍に位置する複数のDNAマーカーを開発した。