抄録
トマトはGABAを最も多く蓄積する野菜の一つである。トマト果実においてGABAは緑熟期に高蓄積し、赤熟期に入ると急速に代謝される。我々はこれまでに赤熟期にGABAが代謝されない変異体DG03-9品種の獲得に成功している。本研究は、トマトにおけるGABA生合成および代謝の鍵酵素を明らかにすることを目的に、モデル品種であるMicro-TomとDG03-9の果実におけるGABA生合成および代謝関連酵素の遺伝子発現、タンパク質量および酵素活性を測定し品種間での比較を行った。その結果、‘果実中のGABA含量の減少’と‘α-ケトグルタル酸依存型GABA分解酵素(GABA-TK)の活性の上昇’に強い相関関係があることがわかった。植物においてGABA-TKの活性はピルビン酸依存型GABA分解酵素(GABA-TP)の活性よりも低いと考えられているが、トマト果実においてはGABA-TK活性がGABA-TP活性の500倍以上高いことが明らかとなった。GABA生合成酵素(GAD)の活性はMicro-Tom果実においては緑熟期に最大に達し赤熟期に低下するが、DG03-9においてはGADの活性は赤熟期に入っても低下しないことがあきらかとなった。これらの結果からGADとGABA-TKがトマト果実におけるGABA生合成および代謝の鍵酵素であることが推察された。