抄録
気孔とは一対の孔辺細胞に囲まれた間隙であり、日周期などの環境変化に応じて開閉運動を行う。細胞骨格のひとつであるアクチン繊維は気孔開閉運動への関与がさまざまな実験系から示唆されているが,その動態と役割に関して統一的な見解は得られていない.本研究では,GFP-ABD2により標識したシロイヌナズナ孔辺細胞のアクチン繊維を日周期を通して撮像し,独自に開発した画像解析系によって気孔開閉運動におけるアクチン繊維の配向,束化,密度を定量的に評価した.その結果,気孔開口過程において一過的なアクチン繊維の束化が生じることを見出した.次に,この束化の役割を知るため,GFP-mTn発現株の解析を行った.GFP-mTnは汎用的なアクチン繊維プローブであるが,近年では過剰な束化が誘導されることも報告されている.GFP-mTn発現株で同様の解析を行った結果,GFP-ABD2発現株に比べ束化レベルが恒常的に高くなっていること,気孔開口が抑制されていることがわかった.以上の結果から,一過的なアクチン束の形成が気孔開口運動の促進に重要な役割を果たすことが示唆された.本発表ではアクチン束の生体膜との相互作用の可能性から,気孔開口運動の促進機構について議論したい.