抄録
rrd1、rrd2、rid4は、不定根形成を指標に単離したシロイヌナズナ温度感受性変異体の1 グループで、カルスの成長など、基本的な細胞増殖に関わる現象全般に不完全な温度感受性を示す点と、制限温度下で帯化した側根を形成する点に特徴がある。この帯化根形成については、半同調的側根形成誘導系を用いた温度シフト実験から、側根原基形成の初発段階に対する変異の影響によることが示唆されていたが、原基を構成する細胞数などを詳細に調べた結果、原基形成開始時の分裂域の拡大が確認され、これが帯化の原因となっていることが示された。
また、各変異体の責任遺伝子のうち、未同定であったRRD2は、精密染色体マッピングにより、第1染色体のおよそ54 cMの位置、140 kbの範囲に存在することが判明した。rrd2変異体ゲノムのこの領域について塩基配列を解析したところ、pentatricopeptide repeat(PPR)タンパク質の一種をコードする遺伝子に、温度依存的な帯化根形成の原因と思われるナンセンス突然変異が見出された。RID4がやはりPPRタンパク質をコードしており、RRD1がpoly(A)特異的リボヌクレアーゼ様タンパク質をコードしていることを考え合わせると、この結果はきわめて示唆的である。