日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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担子菌由来のラッカーゼが植物の形態形成に及ぼす影響
*吉川 海郷Zannatul Nasrin園木 和典飯村 洋介佐藤 かんな片山 義博梶田 真也
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p. 0121

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抄録
担子菌に属する白色腐朽菌は、菌体外にリグニンペルオキシダーゼ、ラッカーゼ等のフェノールオキシダーゼを分泌し、木材を腐朽している。これら酵素の中でも、ラッカーゼは比較的基質特異性が低く、様々なフェノール性化合物を一電子酸化すると共に、酸素を還元する事が知られている。我々は、カワラタケ(Trametes versicolor)より単離したラッカーゼcDNA(CVL3)をCaMV35sプロモーター下に制御してタバコ(Nicotiana tabacum)に導入し、高いレベルでラッカーゼを生産する組換え個体を作出した。この組換え個体は事前の予想通り、水耕培地中に添加した様々なフェノール性化合物の濃度を低下させることができた。その一方で、組換個体には様々な形態異常が生じることも見出された。特に器官形成においては、雄蕊で葯や花糸が花弁化するホメオーシスが観察された他、葯が褐色化し開裂阻害が生じた。また、何らかの未知代謝産物が葯内皮細胞に局所的に蓄積していることも明らかになった。さらに、花弁では、色素の異常蓄積も確認された。これらの現象は、ラッカーゼが植物内で何らかの生理メカニズムに働きかけたことを示唆しており、この酵素の触媒機能が関与し得る代謝について興味がもたれる。
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© 2009 日本植物生理学会
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