日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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分光電気化学的手法によるThermosynechococcus elongatus由来の光化学系II一次電子受容体フェオフィチンaの酸化還元電位計測
*加藤 祐樹杉浦 美羽渡辺 正
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p. 0161

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抄録
光化学系IIは、一次電子供与体P680(P)と一次電子受容体フェオフィチンa(Ph)の間で生じる光誘起電荷分離を駆動力とし、一連の電子伝達と酸素発生を伴う水の酸化を行う。水を酸化するほどの高い酸化力の源は電荷分離で生じるPの正孔とされるが、酸化力の指標となる酸化還元電位E(P/P+)の実測例はなく、推測の域にとどまる。この推測を裏付ける実験的証拠の一つに、Phの電子受容電位、すなわち酸化還元電位E(Ph/Ph-)が挙げられ、30年程前に-610 ± 30 mV vs. SHEと報告された値(Klimov et al. 1979)が重視されてきた。しかし、誤差が大きいだけでなく、信頼性にたるとも言い切れない。それは、追試も一件あるが、いずれも滴定法が用いられ、滴定剤の還元力を高める目的でサンプルのpHを生理的条件から外れた11.0としているため、実態を表していない可能性があるからである。そこで我々は、分光電気化学的手法の適用により、pH 6.5でE(Ph/Ph-)の実測を試みた。シアノバクテリアの一種T. elongatusから分画した光化学系IIを対象に測定したところ、-505 mV程度(誤差±10mV含む)と求められ、従来の値より100 mV程度貴であることを明らかにした。この結果より、E(P/P+)も同様にこれまでの値より100 mV程貴だと推測される。
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© 2009 日本植物生理学会
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