抄録
花の脂質組成は他の組織と比べて特徴的であり、このことが花の発達や機能と密接に関係していると考えられている。しかしながら、シロイヌナズナの花においては、そのサイズの小ささから、花の発達に従ってどのような脂質組成の変化が起こるかを調べることはこれまで困難であった。われわれはこの点を克服するために、シロイヌナズナの花の同調発達系「スーパープラント」を構築し、詳細な脂質プロファイリングを行った。まず、花の発達が早期で停止しカリフラワー状の花芽を呈する変異体ap1-1cal-5にAPETALA1(AP1)遺伝子を誘導性プロモーター下で導入したところ、得られた形質転換体はAP1誘導後、同調した花の発達を示した。このトランスジェニック植物体を用いて詳細なリピドミクス解析を行ったところ、花の脂質組成は発達にしたがって劇的に変化することがわかった。このことから、花の脂質代謝は発達にしたがって活発に変化しており、「スーパープラント」は花の脂質代謝とその機能解析を行うに適した技術であることがわかった。