抄録
葉の老化過程において、葉緑体タンパク質は主要なリサイクル窒素源として分解され、新規合成器官へと転流される。その際、葉緑体そのもののサイズが縮小し、さらに数が減少していくことが知られている。オートファジーは細胞質やオルガネラのバルクな分解系として知られるが、その葉緑体分解への関与を遺伝学的に示した報告はなかった。最近、私たちは葉緑体由来の小胞RCBが、オートファジーによって液胞へ輸送されることを明らかにした。本研究では、オートファジーによる葉緑体の分解経路についてさらに詳細に解析した。
野生体とオートファジー欠損変異体シロイヌナズナを用い、短期間で明確に葉緑体分解を解析するための一老化モデルとして、個別に暗処理した葉で誘導される老化において、暗処理葉の葉緑体数、サイズの計測を行った。その結果、5日間の処理中、野生体では葉緑体数とサイズが処理前より有意に減少したのに対し、オートファジー変異体では、葉緑体数の減少はなく、サイズも処理後一日目以降一定となった。さらに、野生体の液胞には、多数のRCBが検出されると同時に、葉緑体そのものの局在が生葉の細胞中で直接的に確認された。以上の結果は、葉緑体が小胞RCBとして「部分的に」また、「丸ごと」オートファジーにより液胞へ輸送、分解される2つの経路が存在することを示した。