抄録
植物の環境ストレス応答において、転写抑制因子群が重要な役割を担っていることが知られている。酵母の塩感受性株を相補する遺伝子として単離されたZAT10/STZは、C2H2型ジンクフィンガーファミリーに属しており、特定の遺伝子の発現を抑制していると考えられる。今回、我々は、ZAT10に近縁な2つの遺伝子(AZF1、AZF2)の機能解析を行った。DEX誘導性プロモーターによりAZF1またはAZF2を過剰発現した植物のマイクロアレイ解析を行ったところ、多くの共通した遺伝子の発現が抑制されていることが示された。これらの植物はDEX処理により矮化し、また、AZF1/AZF2プロモーター:cDNAを導入した植物は、根の成長抑制を示した。一方、azf1azf2二重変異体では、塩ストレス条件において根の伸長促進が見られた。AZF1/AZF2プロモーター:GUSやAZF1/AZF2プロモーター:cDNA-GFP融合遺伝子を導入した植物では、根や子葉においてGUS活性やGFPの蛍光が確認された。以上の結果より、AZF1とAZF2は機能的に相補しており、環境ストレス下における植物の成長制御に関与している可能性が示唆された。現在、シロイヌナズナのプロトプラストを用いた一過的発現系により、AZF1とAZF2の直接の標的遺伝子を同定するとともに、これらの転写因子が結合するシス配列の解析を進めている。