抄録
ミヤコグサ内在のTy3-gypsy型レトロトランスポゾンLORE1(Lotus Retrotransposon1)の転移誘導に成功した。これによりマメ科初の、内在の転移因子を利用した遺伝子タギング系の確立が可能となる。
これまでLORE1の転移が検出されていたのは、AcトランスポゾンをミヤコグサのアクセッションGifuに導入した集団のみであった。この集団は組織培養を経て確立されたため、組織培養がLORE1の活性化に関与する可能性が考えられた。解析の結果、他の再分化個体集団のR1世代においてもLORE1が転移している事が分かり、LORE1は組織培養の過程で活性化されうる事が分かった。転移が見られたR1の親のR0個体では、LORE1の転写レベルが上昇していたが、転移は検出されなかった。またLORE1は主に配偶体的に転移する事が分かった。以上から、組織培養を経てLORE1は活性化され、再分化個体における転写量が上昇し、その結果新規転移コピーが次世代で検出されると推測された。活性化の機構については現在解析中である。配偶体的に転移するLORE1は、独立の転移イベントを多く蓄積する必要がある、遺伝子タギングへの利用に適している。