抄録
植物は重力を感受し、根や茎などを屈曲させる重力屈性反応を示す。これまでの遺伝学的・生理学的研究により、比重の大きいアミロプラスト(Am)の沈降が重力感受に深く関わると考えられてきた。垂直ステージ顕微鏡を用いた花茎内皮細胞内のAmの動態解析の結果、Amは恒常的に跳躍運動をしており、90o回転後も重力方向に対して複雑な運動をすることが報告されている。1g環境で見られるAm動態は、比重差に由来する沈降運動以外に細胞骨格を介した運動などの様々な運動成分が含まれるため、Amのどのような運動が重力感受に関わるか結論に至っていない。そこで重力依存的な沈降が他の運動成分よりも支配的となる遠心過重力環境を用いて、過重力によって引き起こされる屈性反応および過重力中のAm動態を解析し、重力感受に必要なAmの運動について研究を行った。シロイヌナズナ花茎切片に過重力(10g)を30秒間負荷すると有意に重力屈性反応が引き起こされた。つまり10g・30秒間のAm動態に重力感受に関わる運動が存在する可能性が高い。最近我々は過重力中のAmをリアルタイム観察するために遠心顕微鏡を開発した。これを用いて10g中のAmを観察した結果、細胞内の大部分のAmが過重力負荷と同時に沈降を始め、30秒程度で複数のAmが底面の原形質膜に到達した。よって、重力によりAmが細胞底面に向けて沈降することが重力感受に重要であると考えられる。