抄録
酸素発生型光合成を行うシアノバクテリアの生存において、活性酸素に対する応答防御系は非常に重要である。当研究室では、Synechocystis sp.PCC 6803におけるマイクロアレイ解析の結果から、活性酸素に応答する転写因子としてSll0088(SufR)を見出した。SufRは、鉄硫黄クラスター合成系のsuf遺伝子群の発現を抑制し、そのC末端付近には鉄硫黄クラスター結合モチーフを持っている。
本研究では、Thermosynechococcus elongatus BP-1におけるSufRホモログ(TeSufR)の解析を行った。鉄硫黄クラスターの形成能を強化した大腸菌で発現させたTeSufRを、嫌気条件で単離精製すると、EPRスペクトルは[4Fe-4S]型の鉄硫黄クラスターの結合を示していたが、好気条件では[1Fe-0S]型の鉄硫黄クラスターのEPRスペクトルを示した。その2つの型の鉄硫黄クラスターの相互変換の可能性を調べるために、in vitroでの再構成を行ったところ、同様に嫌気条件では[4Fe-4S]型、好気条件では[1Fe-0S]型を結合していた。また、[4Fe-4S]型は[1Fe-0S]型よりも、酸素に対する感受性が高かった。これらの異なる鉄硫黄クラスターを持つことの生理的意義と活性酸素応答性の関連について現在検討中であり、これらを合わせて議論する。