抄録
遺伝子組換えが容易に行えるシアノバクテリアは、植物型酸素発生機構を解析する実験材料として有用である。我々は中温性シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942の遺伝子組換えにより光化学系II(PSII)の反応中心ヘテロダイマー(D1/D2タンパク質)をThermosynecococcus vulcanus 由来の耐熱性タンパク質と置換した菌株を構築してきた。
本研究ではPSIIのCP47サブユニットにHistagを付加し、PSII複合体をアフィニティー精製できる菌株を作成することを目的とした。菌株作成の方法としてrps12媒介遺伝子置換法を用い、psbB遺伝子の3’末端にHistag配列を付加したS.elongatus PCC7942の二点相同組換え体GRPS800株を作成した。組換え体のPCR分析では染色体上のpsbB-psbTオペロンがpsbB-histag::[rps12-kan]-psbTに置換されていることが確認された。オペロン下流のpsbTの遺伝子発現低下への影響をなくすために、psbT上流にpsbBプロモーターを挿入した組換え体GRPS801も作成した。今後、挿入した[rps12-kan]カセットを除去し、マーカーフリーとした菌株を作成し、PSII複合体のアフィニティー精製に応用していく。