抄録
グラム陰性細菌であるラン藻は2種類の膜構造(細胞膜、細胞外膜)をもち、その細胞外膜は細胞内と細胞外を隔てる重要な構造である。また、細胞外膜の外側は細胞外多糖で覆われており、細胞外膜とともに環境ストレスから細胞を守ることに貢献していると考えられている。細胞外多糖は大きく分けて3種類の多糖類から成っている。それは細胞外膜と結合しているlipopolysaccharide (LPS)、細胞外膜と結合していないreleased polysaccharide (RPS)、粘液状の層を成して細胞表面を覆っているcapsular polysaccharide (CPS)である。細胞の表面構造とストレス防御との関係を解析するために、糸状性ラン藻Anabaena sp. strain PCC 7120の細胞外膜のリピッド-A生合成に関わる遺伝子を破壊し、その表現型を解析した。その結果、破壊株は塩ストレス、窒素欠乏、低温ストレスにおいて強い生育阻害が観察され、高温ストレス、浸透圧ストレスにおいても若干の生育阻害が認められた。野性株と破壊株においてLPSを抽出しSDS-電気泳動を行ったが、大きな変化は認められなかった。しかし、RPSとCPSを抽出し糖量を測定したところ、生育段階によって差があるものの、RPS、CPSともに破壊株で影響が認められた。細胞外膜、細胞外多糖、ストレス防御の関係について議論する。