抄録
我々は、ヘテロシスト形成能を持つシアノバクテリア14種からニトロゲナーゼ活性の高い株として Nostoc sp. PCC 7422 株を選抜し、取り込み型ヒドロゲナーゼ遺伝子破壊株(ΔhupL 株)を作成したが、この変異株は水を電子供与体とするO2発生条件下で、H2を濃度約30%に蓄積した。今回、この変異株をAr + 5% CO2 を主体とした気相で培養する際に気相中の窒素濃度を変え、水素蓄積量と、ニトロゲナーゼ活性に対する影響について研究した。窒素制限培地に移してから8日までの水素蓄積濃度は、窒素50%を含む培養と比較して、窒素20%では約5倍、窒素10%では約10倍となり高濃度の窒素は水素生産に阻害的であった。次に、窒素制限培地に移してヘテロシストが増加するまで(前期)と、それ以降(後期)のそれぞれについて、窒素濃度を変えて検討した。ニトロゲナーゼ活性は、後期窒素濃度10%以上では上昇後速やかに減衰した。前期窒素濃度を 1%、5%、10%とし、7日目にそれぞれを後期窒素濃度1%、5%、10%に移すと、後期窒素濃度 1%のものは 5%のものと比較しておよそ1.5倍の水素を8日間に蓄積した。後期窒素濃度 1%の比較では、前期窒素濃度 5%、10%、1%の順で水素蓄積量が多かった。前期窒素濃度 5%では、後期窒素濃度 1%のものは、10%のものと比較して約9倍の水素を蓄積した。