日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 309
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発表要旨
津波によって侵食された海浜地形の修復過程
-2011年東北地方太平洋沖地震津波による宮城県中部沿岸での事例-
*小岩 直人葛西 未央伊藤 晶文松本 秀明
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抄録

はじめに 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は,地盤の沈降,および津波による海浜地形の侵食という形で大きな地形変化をもたらした.本発表では,宮城県中部のいくつかの海岸を対象とし,撮影日の異なる複数の航空写真や衛星画像による解析,GPSを用いた高精度の現地調査を基に,東北地方太平洋沖地震津波に伴う地形変化,および,その後の修復過程(約2年間)を考察した結果を報告する.
調査方法 調査は,おもに国土地理院で撮影された航空写真(津波前,津波直後),GoogleEarthの衛星画像(津波後~約1年後)を用いて津波時およびその後の地形変化傾向の検討を行った.また,GPS測量には,マゼラン社製のProMark3を用いたキネマティク測量により行った.GPS測量によって得られたデータは,GISを援用し,津波から2年後の標高分布図を作成した.  
結果 仙台平野北部に位置する七北田川の河口部の砂州は,津波により大きく侵食されていて,それまで存在していたラグーン(蒲生干潟)が消失したことが指摘されている.図1には,2011年5月26日撮影(国土地理院)の航空写真に,津波によって侵食から免れた砂州の分布(2011年3月14日)を示している(図1左).この地域では,砂州は,津波時に大きく侵食されているものの島状に残存している.津波後,比較的短時間で,島状に残った地形を繋ぐように新たな砂州(砂嘴?)が形成されている.とくに北部では湾曲した平面形の砂嘴が形成されている.その後,2011年5月26日時点で形成されていた砂州の海側に,新たな砂の高まり(標高3m前後)が付加され,砂州の成長が行われていることがわかる(図1右).この砂州は,新たに形成された5月26日における砂州地形の影響を受けて直線状に海側に成長している.現地では海側の高まりを越波するウォッシュオーバーの堆積物が顕著にみられ,新たな地形形成において重要な役割を果たしていると判断される.津波後に新たに形成された砂州の土砂量は,約22万㎥と算出された.発表当日は,野蒜海岸,および荒浜海岸の事例も紹介する予定である.
おわりに今後,調査地域を広げるとともに津波前,津波直後のDEMを用いて,津波時の侵食量を求め,その後の土砂堆積量との比較を行い,土砂収支に関する検討を行う予定である.なお,本研究の実施には,福武財団による助成金を使用した. 

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© 2013 公益社団法人 日本地理学会
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