2023 年 25 巻 1 号 p. 52-58
高級アルコール等の動的に揺らぐ中距離構造を有する液体中に溶けた溶質分子の並進拡散運動を,溶質サイズを変えて検討した.小さい溶質は流体力学モデルより一桁程度大きい拡散係数を示したが,溶質の重心位置を固定して力の相関関数から拡散係数を評価すると流体力学的挙動の回復が見られた.溶質に働くランダム力と溶媒和構造の揺らぎの相互相関の解析から,小さい溶質での流体力学モデルの破れは,溶質自身の運動によって溶質拡散と溶媒の中距離構造のダイナミクスとの間のカップリングが解けることに起因していることが分かった.