抄録
オーキシンは酸成長と細胞壁分解酵素(イネ科植物ではエンド型1,3:1,4-β-グルカナーゼ, EI)の発現を通して細胞壁のゆるみを引き起こし、伸長を促進すると考えられている。しかしEIの発現はオーキシン処理後4時間以降でないと検出できず、オーキシンによる成長が短時間(30分以内)に誘導されることから、初期のオーキシンによる伸長誘導は酸成長が、後期はEIが関与すると説明されてきた。そこで後期の伸長関与をさらに詳しく調べることにした。黄化オオムギ幼葉鞘をIAAおよび2%Sucroseで処理し伸長の様子を調べると、IAAにSucroseを加えることでさらに伸長が促進されることが分かった。細胞壁ヘミセルロース中に含まれるグルコース量を測定すると、IAAのみで処理したものはグルコース量が減少し、Sucroseを加えたものはグルコースが多く検出されたことからSucroseでヘミセルロースの分解が抑制される可能性が生じた。
次に伸長実験後のサンプルのEI遺伝子の発現量をRT-PCRで定量した。その結果IAAのみで処理したものはEIの発現が促進されるが、Sucroseを加えると逆に発現が抑制されることが分かった。以上の結果は、オーキシンによるイネ科細胞壁中の1,3:1,4-β-グルカンの分解はオーキシンによる伸長成長の原因ではない可能性を示唆している。