抄録
植物は栄養成長期に光エネルギーを利用しソース器官である葉で炭素や窒素を同化し糖やアミノ酸を合成する.生殖成長期になるとこれの同化産物をシンク器官である実に輸送し蓄積・利用する.このソースシンクのバランス制御は植物の成長制御における重要な要素である.この制御機構の解明は,人為的な有用化合物の効率的な蓄積技術の開発に繋がると考えられることから我々は特に窒素化合物の代謝制御に着目し解析を行なった.まずシロイヌナズナを用いたモデル実験系を構築しシンクソースバランス制御に関わる因子の同定を目指した.シンクソースバランスの一過的な改変手法として結実後に抽台茎の切除を行ない,葉での代謝物(アミノ酸),遺伝子発現の変化を解析しその影響を調べた.その結果,葉の生育ステージの進行に伴い増加(または減少)する代謝物および遺伝子の多くが茎切除後に減少(または増加)することを見出した.さらに茎切除後に葉におけるサイトカイニン合成酵素AtIPT3の発現が上昇し,それに引き続きサイトカイニン含量が増加した.サイトカイニン合成酵素遺伝子(AtIPT3)破壊株およびサイトカイニン受容体遺伝子(AHK3)破壊株を用いた解析から,茎切除後の葉でアミノ酸や遺伝子発現変化の一部がサイトカイニンによって制御されることを示唆する結果を得た.