日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
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セルロース合成阻害剤に対する感受性が変化した変異体が示す、ホルモンと関連する形質
*中川 直樹櫻井 直樹
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p. 0713

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抄録
セルロース合成が阻害されると植物は形態変化、リグニン合成増大等の様々な応答を示す。ジャスモン酸等のホルモン量も変化することが示されている。我々はセルロース合成阻害剤 (2,6-dichlorobenzonitrile, DCB) に対する感受性が変化した変異体を複数単離し分析している。本発表ではこれらの変異体が示すホルモン関連形質について報告する。
DCBに対する感受性が低下した変異体 (css1)は、ミトコンドリアのNADH脱水素酵素の正常な構築に必要な因子(At-nMat1a)に変異が生じている。その結果セルロースを含む多様な基礎代謝産物の量に変化が生じている (PCP 47:772-83(2006))。css1変異体は培地の糖濃度が低い、高いどちらの条件でも生育が抑えられた。しかしその機構は不明だった。糖応答と植物ホルモン、特にABAは関連が深い。そこでcss1変異体のABA感受性を調べた。その結果野生型より低濃度のABAで発芽後の生育(子葉の拡大、緑化)が強く抑えられた。ABAと関連する遺伝子のmRNA量も野生型より増加していた。この変異体でのミトコンドリアに関連する異常が、基礎代謝だけでなくABA代謝にも影響を及ぼしている可能性が考えられる。現在この変異体の植物ホルモン定量を試みている。他のDCBに対する感受性が変化した変異体に関してもホルモン関連の性質を調べている。
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© 2009 日本植物生理学会
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