抄録
植物細胞の伸長方向は、細胞周期間期の表層微小管や細胞壁最内層のセルロース微繊維によって制御されている。微小管の重合・脱重合の調節が表層微小管の配向に影響し、細胞の伸長方向に関わることが示唆されている。我々は表層微小管の構築や維持に関与する因子をさらに単離するため、微小管重合阻害剤プロピザミドに対して細胞伸長に影響を与える変異体を多数単離した。シロイヌナズナpropyzamide hypersensitive2は単一劣性変異体であり、通常の培地条件では、根の伸長方向は野生株とほとんど変化がない。ところが、3uMの薬剤存在下で、phs2変異体の根は野生型に比べ伸長阻害や細胞肥大を示した。また、鞘のねじれが見られる。phs2変異体は、新規の遺伝子に欠損があり、5’上流、3’下流を含むゲノム領域がphs2の薬剤高感受性を相補したことから、この遺伝子をPHS2と同定した。PHS2は11個のTPRリピートをもち、シロイヌナズナやイネでも遺伝子ファミリーを形成している。PHS2のN末端にGPFを融合した形質転換植物体はphs2表現型を相補し、表層微小管上に蛍光が観察された。以上のことから、PHS2が新規の微小管制御遺伝子として、植物細胞の表層微小管の配向制御等に関与することが強く示唆された。