抄録
我々はこれまでにイネよりEarly-nodulin型タンパク質 (ENODL) を新規アラビノガラクタンタンパク質として同定し、その機能の追究を行っている。ENODLは銅結結合ドメインであるplastocyanin-like ドメインを有するphytocyaninと総称されるタンパク質ファミリーの一種であるが、銅結合に必要なアミノ酸残基が保存されておらず、その生体内での機能は未知である。今回、我々はENODLの機能解明を目的とし、ゲノム情報からシロイヌナズナENODLファミリーを明らかにし、T-DNA挿入ラインを用いたENODL遺伝子の網羅的な機能解析を行った。シロイヌナズナには22個のENODL遺伝子が存在し、そのうち18個がGPIアンカー型タンパク質であった。15個のENODL遺伝子についてT-DNA挿入ラインを入手しホモラインを選抜した結果、通常生育条件下で明瞭な表現型は観察されず、ENODL遺伝子間での機能重複の可能性が考えられた。そこで相同性が高いENODL遺伝子間で二重変異体を作製したところ、一組において二重変異体が得られる割合が非常に低かった。ENODL遺伝子の部位別の発現解析では、多くのENODL遺伝子が花器官で特異的な発現が見られ、ENODL遺伝子が生殖器官で機能を有する可能性が示唆された。