抄録
先行研究では、外国語で読む道徳ジレンマは論理的な回答が好まれる現象「Foreign Language Effect(FLE)」が見られるとされています。FLEは、外国語読解で観察される心的イメージの低下によって引き起こされると推測されています。本研究では、心的イメージが外国語での道徳ジレンマの意思決定にどのような影響を及ぼすかを検討した。2つのグループに、第二言語による道徳ジレンマを事前・事後テストとして提示した。一方のグループは2つ目のジレンマの前にイメージの指導を受け、もう一方のグループは受けなかった。指導を受けたグループは、事後テストの条件下で、義務論な選択がわずかに増加することが示された。また、このグループでは、事後テストのジレンマの登場人物の鮮明さが有意に増加することを示した。この結果から、低いイメージ力やFLEの場合でも、心的イメージを促すことで、物語への没入感や義務論的判断を高めることができると考えられる。