抄録
4クマロイルCoAリガーゼ(4CL)遺伝子はフェニルプロパノイド経路の生合成の基質である4クマロイルCoAを生成する酵素をコードする遺伝子である.この遺伝子は遺伝子ファミリーを形成し構造の系統樹解析からクラスI型とクラスII型に分けられる.クラスI型はリグニンの合成に,クラスII型はフラボノイドの合成に関係するとされる.しかし,それらの基質特異性や生体での役割は不明な点が多い.シロイヌナズナでも4つの遺伝子が見つかっており,At4CL1, 2, 4 がクラスI型,At4CL3 はクラスII型とされる.ラズベリーでも3つの遺伝子が同定され,系統樹解析とRi4CL3 が花と実で発現が多いことからフラボノイドと香気成分の合成にも関わっていることが指摘されている.ペチュニア(Petunia )では多くの花の色素合成に関わる遺伝子が同定されているが,4CL遺伝子については報告がない.今回,ペチュニアの花弁で発現する4CL遺伝子を取得した.RNAi法で同遺伝子の発現を抑制した形質転換体を作成したところ,花弁でのアントシアニンの蓄積が顕著に抑制された.プロモーターを用いた形質転換体の解析から,本遺伝子は花弁で特異的に発現していることがわかった.これらの結果について考察する.