抄録
DnaJファミリーのタンパク質(Jタンパク質)は,Hsp70の機能を制御するパートナータンパク質であり,Jドメインとよばれる機能領域をもつ.小胞体Hsp70,BiPは小胞体Jタンパク質を使い分けることで,品質管理機構,膜透過等で機能する.われわれは,シロイヌナズナにも出芽酵母および哺乳動物細胞と同様の小胞体Jタンパク質が存在することを明らかにした.AtERDJ3A,AtERDJ3BとAtP58IPK遺伝子の遺伝子産物は出芽酵母jem1Δ scj1Δ株の30℃での増殖を抑圧した.これらの結果は,これら遺伝子が小胞体品質管理機構で機能することを示唆している.
T-DNA変異体を用いた解析を行ったところ,AtERDJ3A,AtERDJ3BとAtP58IPK遺伝子の破壊株は通常条件では野生株と同様の生育を示した.しかし,aterdj3b破壊株を29℃で栽培すると,種子を付けず不稔性を示した.29℃で栽培したaterdj3b破壊株は,花粉の形成やviabilityは正常だったが,葯から花粉が解離しにくくなっており,柱頭に付着する花粉粒が減少していた.走査型電子顕微鏡で花粉を観察したところ,葯は正常に裂開していたが,花粉同士が付着した様子が観察された.花粉同士の癒着は透過型電子顕微鏡観察でも観察された.