2013 年 10 巻 5 号 p. 125-
ガラスや樹脂などの絶縁体でできた,内径が100nm~数100μmの細管(キャピラリー)にキロボルトやメガボルトの電圧で加速されたイオンビームを入射すると,ある割合で,入射前の電荷や運動エネルギーを保持したまま通過してくることが知られている.この現象を応用すれば,今まで帯電を嫌ってビーム光学系にあまり使われてこなかった絶縁体をむしろ積極的に使ってビーム偏向素子やマイクロビーム生成ツールとして利用することができる.ビームのエネルギー・加速やキャピラリーの種類によって様々な実験やシミュレーション,更には応用を目指した開発が行われている.本稿ではその現状を紹介する.