抄録
我々は、植物の機械刺激受容の分子機構を明らかにする目的で、シロイヌナズナのCa2+透過性機械受容チャネル候補の遺伝子MCA1とMCA2を単離した(Nakagawa et al., PNAS 104:3639-3644, 2007)。MCA1とMCA2は、互いにアミノ酸配列上73%の同一性をもち、出芽酵母のCa2+透過性機械受容チャネル候補の欠損株(mid1)の低Ca2+取込み能を完全に相補する。しかし、MCA1とMCA2はMid1や既知のイオンチャネルとの間にアミノ酸配列上の相同性がない。MCA1とMCA2の構造上の共通した特徴は5つあるが、そのうちの1つがCa2+結合領域と予想されるEF-ハンド様モチーフである。Ca2+の結合はこの分子の機能制御に重要と予想されるので、45Ca2+オーバーレイ実験により両タンパク質のCa2+結合能を調べた。その結果、両タンパク質ともこのモチーフを含む領域が、確かに45Ca2+を結合した。さらに、出芽酵母高発現系で発現させたMCA2のショ糖密度勾配遠心法による解析から、MCA2は細胞膜と小胞体膜とは異なるオルガネラ膜に多く存在するが、一部は確かに細胞膜に局在することも明らかにした。これまで及び今回の結果は、MCA1およびMCA2は細胞膜でそれぞれ四量体を形成し得るCa2+透過チャネルであり、Ca2+によって活性制御を受けることを示唆する。