抄録
孔辺細胞のアブシジン酸(ABA)情報伝達において蛋白質リン酸化反応が重要な役割を担うことが示されているが、リン酸化を介した情報伝達の分子機構は不明な点が多い。我々は以前、ソラマメを用いてABAに応答してリン酸化され、14-3-3蛋白質と結合する孔辺細胞に特異的な61 kDa蛋白質を報告した。今回、シロイヌナズナ孔辺細胞を用いて、ABAに応答して14-3-3蛋白質と結合する53 kDaと43 kDaの二つの蛋白質について報告する。これらの蛋白質と14-3-3蛋白質との結合はABA処理後数分で飽和する速い反応で、ABA濃度依存性や二次メッセンジャーH2O2に対する応答がソラマメ61 kDa蛋白質とよく似ていた。我々は、ABA非感受性突然変異株の孔辺細胞を用いて、これら53,43 kDa蛋白質のABA情報伝達における位置づけをおこなった。その結果、abi1-1や abi2-1突然変異株ではABAに依存したこれら蛋白質への14-3-3蛋白質の結合が抑制されていた。したがって、これらの蛋白質はABI1やABI2が関与する経路の下流で働くと思われる。一方、ost1/srk2e突然変異株では53,43 kDa蛋白質の両者とも野生型並に14-3-3蛋白質と結合した。このことから、53,43 kDa蛋白質はOST1/SRK2Eの上流または別経路に位置すると考えられる。