抄録
シロイヌナズナの赤色光、遠赤色光受容体phyAとphyBは似た構造を有するにも関わらず異なる光応答能を持つ。『赤色光による分解』『遠赤色光による核移行』『遠赤色光による胚軸の伸長抑制』はphyA特異的な応答であり、『赤色光による胚軸の伸長抑制』はphyB特異的な応答である。このような機能上の違いがどのようなフィトクロム分子上の構造の違いに由来するのか良くわかっていない。そこで本研究ではフィトクロムを4つのドメイン(N末突出部+PAS、GAF、PHY、C末)に分け、それぞれをphyA、phyB間で交換し、GFPを融合したキメラ遺伝子14種を構築し、35Sプロモーターで発現させた形質転換植物(phyA/phyB二重変異体背景)を作製して生理応答を観察した。得られた植物のGFP観察により、『赤色光による分解』『遠赤色光による核移行』はN末突出部+PASに大きく依存する事が分かった。また『遠赤色光による胚軸伸長抑制』はN末突出部+PASに加えPHYがphyA由来である事が重要である事も示された。さらに、『赤色光による胚軸伸長抑制』については、赤色光により分解されるタイプのキメラ分子では応答が見られず、分解されないものではPHYあるいはC末がphyA由来になることで赤色光に対する感度が増す事も示された。以上により、ドメイン間の複雑な相互作用により光環境にうまく適応していると考えられる。