抄録
マメ科作物のササゲ(Vigna unguiculata [L.] Walp.)は、暑さや乾燥に強いことから、熱帯・亜熱帯地域においては大変重要な食用マメ類である。しかし、高夜温下では収量が著しく低下する。我々は高温下でのササゲ生殖器官へのプロリンの蓄積と収量の維持との関連の解析を行ってきた。ここでは、プロリントランスポーター遺伝子及びプロリン合成に関わるP5CS, P5CR遺伝子の発現が生殖器官へのプロリンの蓄積及びササゲ耐暑性とどの様に関わっているかの解析の報告を行う。
耐暑性のササゲ品種は高温ストレス条件下において、葯(花粉)のプロリン蓄積量の減少が比較的少ない事を昨年度の植物生理学会で発表したが、更に雌蕊へのプロリン蓄積量が増加する事が明らかとなった。ササゲのプロリントランスポーター遺伝子はProT1, ProT2二つのホモログが確認された。この内ProT1は、葯及び花茎での発現量が多く、植物体の他の部分で作られたプロリンを生殖器官へ輸送するのに重要な役割を果たしていると考えられる。一方、ProT2はほぼ全ての器官において一定量の発現が認められ、植物体の維持に関与している事が考察された。またProT1の発現は、耐暑性系統の葯で多く、感受性品種の葯では少ない事も明らかとなった。