抄録
シロイヌナズナの転写制御因子遺伝子DREB2Aは、植物の環境ストレス応答において重要な役割を担うことが明らかにされている。このDREB2A遺伝子と最も相同性の高いホモログとしてDREB2B遺伝子が見出されている。DREB2タイプの転写因子による遺伝子発現制御機構を解明するためには、DREB2B遺伝子の機能を解析することが重要と考えられるが、DREB2Aに比較して遅れている。そこで、本研究ではDREB2Bの機能を解析して,DREB2Aと比較した。
定量RT-PCRによる発現解析によって、DREB2B遺伝子の発現はDREB2Aと同様に乾燥、高温、高塩濃度のストレス下で上昇することを明らかにした。GFP融合タンパク質を用いたシロイヌナズナ葉肉細胞の一過的発現系により、DREB2Bタンパク質の核における局在性を確認した。DREB2B過剰発現体とT-DNA挿入破壊株の非ストレス下での表現型は、いずれも野生型植物体と比べて差異は見られなかった。DREB2B過剰発現体を用いたマイクロアレイ解析では41個の遺伝子の発現が上昇しており、これらの多くは糖代謝に関わる遺伝子であった。一方、DREB2B過剰発現体では顕著な高温ストレス耐性の向上が認められた。DREB2Aの負の活性調節領域と極めて相同性の高い配列がDREB2Bにもあることから、現在、この配列の転写調節における機能について解析を進めている。