抄録
フルクタンは耐乾性や耐凍性に関与する多糖であり、スクロースを基質として液胞内に蓄積する。コムギのフルクタン合成酵素遺伝子を導入したイネでは、本来イネにはないフルクタンが蓄積し、耐冷性が向上する(川上ら、J.Exp.Bot. 2008)。このフルクタン蓄積イネを利用して耐冷性機構の一端を明らかにする目的で、昨年度大会で、1ヶ月生育イネの低温下におけるショ糖輸送タンパク遺伝子(OsSUT)の発現変化を報告した。本年は冷害危険期であるイネの穂ばらみ期において同解析を行った。穂ばらみ期に12℃処理したイネでは、ソース葉とその葉鞘において著しいショ糖の蓄積が起き、形質転換体ではフルクタンが増加した。常温環境下に戻すとショ糖は速やかに元のレベルまで減少するが、シンク組織である幼穂では逆に低温下でショ糖が徐々に減少し、常温に戻すとショ糖が増加した。OsSUT1-5の遺伝子発現変化を組織別にReal-time PCRにより解析したところ、篩部組織のショ糖輸送に関与すると考えられているOsSUT1は、低温処理中の葉鞘で発現が減少、常温に戻すとその発現量は増加し、低温下でのショ糖輸送能低下がソース・シンク組織のショ糖含量変化に関与していることが示唆された。この時、葉鞘でのOsSUT1の発現変化および量は形質転換体と非形質転換体で差異はなかった。ショ糖輸送と低温耐性との関係を考察する。