抄録
我々はこれまでに、高浸透圧ストレスシグナル伝達におけるタンパク質リン酸化の重要性を明らかにしてきた。同ストレスによる迅速なリン酸化を受けるタンパク質を同定するため、イネ培養細胞全タンパク質抽出液を用いてフォスフォプロテオーム解析を行ったところ、微小管構成タンパク質α-tubulinのリン酸化が示唆された。このことをPhos-Tag SDS-PAGEを用いて確認し、イネ植物体においてこのリン酸化が5分以内に起きることを明らかにした。さらに詳細な解析の結果、(i) イネのみならずシロイヌナズナにおいても内在性α-tubulinのリン酸化が見られること、 (ii) ストレス除去後は迅速に脱リン酸化されること、 (iii) リン酸化部位はチューブリンヘテロ二量体間の相互作用表面に位置するThr349であること、 (iv) 試験管内重合/脱重合アッセイによりリン酸化α-tubulinは微小管に取り込まれることを明らかにした。これらの結果から、α-tubulinの高浸透圧ストレスによるリン酸化の生理的意義について考察したい。