日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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葉緑体光応答プロモーターpsbD LRPの進化
*新村 修一野添 幹夫椎名 隆
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p. 0740

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抄録
葉緑体コードの光合成遺伝子は、バクテリア型のRNAポリメラーゼであるPEPによって転写される。標準的なPEPプロモーターは大腸菌のσ70型プロモーターに似ており、保存された-35および-10配列を持つ。光化学系IIの反応中心タンパク質D2をコードするpsbD遺伝子の発現は、強光や乾燥、塩などのストレスによって特異的に誘導される。psbD光応答プロモーター(psbD LRP)は、ユニークなPEPプロモーターの一つで、転写開始点の40-60塩基対上流にAAG-boxを持ち、σ因子の一つSIG5によって特異的に認識される。本研究では、コケから裸子植物の代表的な植物種についてプロモーターマッピングを行い、psbD LRPの進化について検討した。その結果、AAG-boxを持つ高等植物型のpsbD LRPは裸子植物と被子植物で保存されているが、シダ植物はAAG-boxとは異なった上流シス配列を持つシダ型のpsbD LRPプロモーターを獲得していることが分かった。この2種のプロモーターは、いずれも翻訳開始点から約900bp上流に存在しており、共通祖先植物のプロモーターから独立に進化したと考えられる。興味深いことに、シダ植物と裸子植物では、psbD LRPからの転写は光応答性を示さなかった。psbD LRPの光応答性は、被子植物の進化過程で出現したと考えられる。
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© 2008 日本植物生理学会
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