抄録
我々はイネのグループIIA Rac遺伝子であるOsRac5の変異体において、いもち病菌に対する抵抗性が増強されることを既に報告した。OsRac5変異体における遺伝子発現の解析結果から、OsRac5 が防御関連遺伝子の発現誘導に重要な役割を担う因子であること、およびOsRac5の機能が失われることにより代替的な病害応答が活性化する可能性が示唆された。また、OsRac5変異体では、複数の病害応答経路に関与する遺伝子群の応答が抑制されたことから、OsRac5は受容体の直下など病害応答における初期段階のシグナル伝達に関与する可能性が高いと推定された。そこで、酵母two-hybrid(TH)法を用いてOsRac5と相互作用する因子を探索した結果、イネのセルロース合成酵素(OsCesA)の細胞質ドメインがOsRac5と相互作用することが明らかになった。イネのゲノムには9つのOsCesAが存在することから、酵母TH法を用いてOsRac5との相互作用の強さを調べたところ、OsCesAごとに異なる相互作用の強さを示すことが明らかになった。さらに、構成活性型(CA)および優性不活性型(DN)OsRac5との相互作用を調べたところ、CAあるいはDNのいずれか一方と特異的に相互作用するOsCesAが存在した。OsCesA変異体のいもち病抵抗性強度を野生型の日本晴と比較した結果についても併せて報告する。