抄録
高等植物の葉や花といった器官は、茎頂に存在する分裂組織から一定の角度を保ちつつ次々と生み出され、そのパターンは葉序と呼ばれる。これまでに、植物ホルモンであるオーキシンが葉序パターンの生成に重要な役割を果たすことが示されてきた。オーキシンはオーキシン極性輸送と呼ばれる細胞間輸送システムにより器官予定領域に蓄積し、茎頂分裂組織周辺領域にオーキシンの不等分布が確立される。このオーキシンの不等分布に基づいて、葉序パターンが生成すると考えられている。しかしながら、オーキシンの輸送方向がどのような機構で決定されるのか、オーキシンの局所的な蓄積の後どのように器官が発達するのかなど、多くの問題が未解明のまま残されている。これらの問題に対して、我々は分子遺伝学的手法を用いて解析を試みてきた。これまでに器官形成に異常を示すmacchi-bou 1, 2, 3, 4 (mab1, 2, 3, 4) 変異体を単離し、MAB1はミトコンドリア型ピルビン酸脱水素酵素のE1βサブユニットを、MAB2はメディエーター複合体のサブユニットAtMED13を、MAB3はオーキシン排出キャリアーPIN-FORMED 1を、MAB4はNPH3様タンパク質をコードすることを明らかにした。本講演では、MAB4に関する最近の知見を中心に紹介したい。