抄録
単細胞、多細胞に関わらず、生物には内的、外的刺激に応じていろいろな状態の細胞が形成され、一定の期間維持される。そして、新たな刺激によって異なった状態へと遷移する。このような変化と安定はどのようなシステムの元に成り立っているのだろうか。我々は多能性幹細胞をモデルとしてこの問題に取り組んでいる。幹細胞は自己複製能と分化細胞を生み出す能力を併せ持っている。多能性幹細胞は発生過程の比較的初期に生じる細胞で、1細胞で成体のほとんどの種類の細胞や組織を作り出すことができる。植物の場合、軸の先端部に多能性幹細胞が形成され、継続的に細胞、組織形成が進行する。本講演では、被子植物とコケ植物ヒメツリガネゴケでの分子発生学的知見を中心に、陸上植物全般、また、動物との比較を通して、幹細胞形成・維持・抑制・転換の共通性と多様性について検討したい。