抄録
シロイヌナズナのゲノムには疎水性ドメインを6個以上持ち膜輸送体をコードすると予想される遺伝子が約1,400存在するが、それらの多くは機能不明である。我々は新たな膜輸送体を発見する手段として、これら遺伝子の総当たり発現解析が有効と考え、膜輸送体限定遺伝子ライブラリAmethyst (Arabidopsis membrane transporter and hydrophobic protein cDNA clones stack)を作製している。
本研究では、遺伝子導入が容易で、様々な既存アッセイ法が活用可能な動物細胞での発現系を構築した。具体的には、個別管理しているAmethyst遺伝子961種類を、CMVプロモータを持つ動物細胞発現ベクターに移植し、動物細胞発現用ライブラリpCMV-Amethystを作製した。次に、総当たり発現スクリーニングの一例として、微量元素の一種であるモリブデンの細胞内濃度に影響する膜輸送体遺伝子を探索した。HEK293T培養細胞を宿主として、Amethyst膜輸送体とモリブデン酸可視化バイオプローブ(MolyProbe)を共発現させ、MolyProbeのFRET蛍光の経時変化を比較分類した。