抄録
未成熟終止コドンを持つmRNAや非常に長い3'UTRをもつmRNAは、nonsense-mediated mRNA decay (NMD) と呼ばれる品質管理機構によって選択的に分解される。正常なNMDの働きにはUPF1、UPF2、UPF3の3つの因子が必須である。mRNA様非コードRNA (mlncRNA) の多くが、NMDの標的になり易い構造をとることに気づいた。そこで、シロイヌナズナのupf1、upf3 変異体に対して、タイリングアレイ解析を行った。その結果、少なくとも36個の既知mlncRNAと97個の新規mlncRNAの蓄積が増加することがわかった。以上のように、NMD機構が多くのmlncRNAを抑制していることを明らかにした(PNAS, 106:2453-2458, 2009)。
NMDの標的RNAの5'→3'方向の分解は、ヌクレアーゼであるXRNによって行われると考えられる。そこで、3つのXRN遺伝子の変異体xrn2、xrn3、xrn4に対してタイリングアレイ解析を行ったが、顕著なmlncRNAの蓄積増加はみられなかった。XRNとの関連が示唆されているFIERY遺伝子の変異体において、いくつかのmlncRNAの蓄積を調べたところ、かすかな蓄積増加が確認された。以上の結果から、3つのXRNが重複してmlncRNAの分解に関与することが示唆される。